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子駅伝、マラソンが盛んになり、男子もさることながら発育期の女子についても男子同様の懸念がある。そこで本年度は女子生徒について練習時の生理的負担度を調べてみることにした。

 

研究方法

1. 対象

被検者は、福岡市内の市立J中学校(3名)、市立Y中学校(6名)の陸上競技部に所属する女子中長距離選手合計9名(年齢13.9±0.9歳)で、対照群はF大学陸上競技部に所属する女子中長距離選手6名(年齢20.0±1.3歳)である。体脂肪率はキャリパーを用いて上腕背側部と肩甲骨下部の2カ所の皮脂厚から推定した。
J中学とY中学の指導者は陸上長距離の経験者であり、それぞれの中学校の体育の教師である。J中学の被検者には福岡市内の3,000メートルロードレースで1位になったもの、Y中の被検者には福岡市内の中学駅伝大会において優勝した時のメンバーが4名含まれている。F大学の被検者には全国大学女子駅伝大会で総合11位であった時の選手2名が含まれている。

2. 運動負荷テスト法

運動負荷テストは、F大学陸上競技場(全天候型400mトラック)にてグランド走による漸増負荷テストを行った。初期負荷は140〜180m/分とし、ペースメーカーの先導により4分間ごとに20m/分ずつ間欠的にランニングスピードを漸増し、被検者が設定されたランニングスピードで4分間走行できなくなるまで継続した。測定時の温度、湿度をNikkei製乾湿計で測定した。また、血中乳酸(LA)を測定するために各負荷終了後1分以内に耳朶よりキャピラリーチューブを用いて末梢血を20μl採血した。その後直ちに溶血し、0.1mMのリン酸緩衝液(PH7.3)で10倍希釈した後、分析まで氷冷保存した。乳酸濃度は固定化酵素(lactate oxydase)とルミノール発光反応を用いたフローインジェクション法(CL−760、島津製作所)により測定した。また、各負荷終了直前の心拍数(HR)を、ハートレートモニター(バンテージXL、POLAR社製)を用いて計測した。胸部に導電ゴム電極の電極ベルトにトランスミッター(送信器)をセットし無線により時計型小型レシーバー(受信器)にデータを送信し、リアルタイムにHRを表示させた。なお、被検者が設定されたランニングスピードで4分間走行できなくなった時のデータは分析の対象から除外した。

3. 練習内容の記録

練習中のスピードはラップタイムと走行距離から算出した、また、運動負荷テスト時と同じハートレートモニターを用いて、各被検者のクラブ活動中のHRの変化を経時的に測定した。受信器に一旦記憶されたHRは、データ解析装置(POLAR社製)を介してコンピューター(MacintoshCentris,Apple社製)に取り込み、HRの実測値(15秒毎の平均値)およびHRトレンドとして処理した。選手には典型的な鍛錬期の練習スケジュールを行うよう要請し、実際に行われた1週間(休日をのぞく6日、表1)の練習中の距離、時間、スピードの記録とHRトレンドとの関係を検討した。

4. データ解析

漸増負荷テストより得られたランニングスピードと血中乳酸濃度の関係グラフから、乳酸閾値(LT)、2mmol/l(2mmol/lLA)、4mmol/l(4mmol/lLA)に相当するスピードを3人の熟練した検者が目視により判定した(図1)。そして、練習中のラップタイムと走行時間、走行距離の関係から(1)LT未満(<LT)、(2)LT強度以上かつ2mmol強度未満(LT−2mmol/lLA)、(3)2mmol強度以上かつ4mmol強度未満(2mmol/lLA−4mmol/lLA)(4)4mmol強度以上(≧4mmol/lLA)、の4つの強度に相当する練習時間と走行距離を積算した。また、前回の報告と同じ方法6)で練習中のHRの反応からの分類も行つた。
両群間の差の検定にはStudentT−testを用い、危険率5%末満を有意水準とした。また、結果は平均値±標準偏差で表した。

 

研究結果

被検者の身体特性と LT、2mmol/lLA、4

 

 

 

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